広島高等裁判所 平成7年(う)105号 判決
論旨は要するに,原判決が消防吏員熱田勝治作成の火災原因判定書の不同意部分につき刑訴法321条4項を準用して証拠能力を認めた点について,消防の捜査は警察等の捜査と実質的に連動しているので,同火災原因判定書を裁判所の手続で採用される鑑定人の鑑定書と同列に扱って同条項を準用するのは違法であるから,証拠能力がない前記証拠を採用した原判決には訴訟手続の法令違背がある,というのである。そこで,検討するに,刑訴法321条4項において,鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについて,その供述者が公判期日において証人として尋問を受け,その真正に作成されたものであることを供述したときは,これを証拠とすることができる旨規定しているのは,当該書面の内容が実質的に鑑定人の鑑定書と同視できるものであればその書面の証拠能力を認める趣旨であると解されるところ,所論にいう火災原因判定書(写)についてみるに,関係証拠によれば,同書面は,火災調査報告書謄本に添付されている,広島市消防局警防部警防課調査係消防士長熱田勝治の作成にかかるものであり,その内容は,関係者の供述内容,実況見分の状況,実験結果等から出火個所を判定し,出火原因の検討をなして出火原因の判定をなしている内容のものであることが認められ,火災原因を決定するまでの経過及び結果を記載したものであって,実質的に特別の知識・経験を有する者の判断を内容とするものと認められること,そして,消防機関は,消防法31条ないし35条の4に従って,ことに「放火又は失火の疑いのあるときはその火災の原因の調査の主たる責任及び権限」がある旨規定されており,前記書面も同規定に従って作成されたものであるといえること,前記消防士長熱田は,原審公判廷において同書面記載の正確性だけでなく,その内容についても実質的な反対尋問を弁護人から受けているところ,同人の原審証言等によれば,同人は,主に火災原因調査を職責としている上,火災原因判定に関する高度の知見,知識及び数多くの火災原因判定の経験を有する者であり,同人自身が本件火災が鎮火したころ現場に臨場して火災状況を見分し,また,被告人らからも供述を聴取していることが認められることなどに徴すると,公正さや客観性を損なわない適格性のある者の作成にかかる鑑定の経過及び結果を記載した書面であるといえ,同書面に刑訴法321条4項を準用して証拠能力を認めた原判決は正当であるから,所論は採るを得ない。